花冷えや女のめくる生地見本 長嶋有

長嶋さんの主催する(主宰ではないそうです)、なんでしょう句会に参加し出してしばらくした去年の7月末(わーもうそんな前だ)。東京マッハvol.11に参加したついでに、未入手だった第一句集の「春のお辞儀」(ふらんす堂)を会場で購入しました。買ったままはや数ヶ月・・・やっと手に取って中身を一気読み。なんだか不思議な感覚でした。やっぱり、いままで読んできた句集とは若干違うなぁと。予想外の方向から打球が飛んでくるようなものもあるし、ストレートにズバシとくるものもあって。後半には連作集もあったりして、なかなか面白く読みました。そんな中から、掲句です。

 

花冷えや女のめくる生地見本 長嶋有

 

「Interior shop」という連作からあえて。なんとまー艶やかではありませんか。この女性は、めくりながら髪をかきあげていますよね。たぶん、耳にかけるように。ミディアムからショートくらいのワンレンがいいですね。それからこれ、店員さんだと思うのです。ちょっと野暮ったい、だぶついたエプロンなんかしてるといいですね。それを遠くから眺めてるんですよ。もちろん、こちらからの問い合わせに応えて、なにかを探し始めたんだと思うのですが、もうそんなことはどうでもいいですね。その姿だけで絵になります。いやこりゃいいなー、と。生地見本なので、パラパラーっと素早くはめくりませんよね。1ページずつ、ゆっくりめくっていくと思うんです。その指先まで見えてくるようではありませんか?

で、花冷えなんですよ。なんでこの句が艶やかに感じるのかな、と考えてみたのです。花冷えという季語は、「桜の咲くころ、急に冷え込むことがある。花冷という言葉の持つ美しい響きが好まれる」(角川俳句歳時記第四版:角川学芸出版より)とのこと。たしかに。言葉の響きも美しいと思いますが、その字もきれいです。華やかさと冷たさが同居していて、いい言葉ですよねぇ。それを切れ字で切って前に置いてあることで、その後に続く動作がより際立ってくるように思います。際立ってくるというか、押し上げられてくるのかな。切れ字の効果なのか、「花」も「冷え」もその女性、また女性の仕草にそこはかとなくかかってきているように思えます。

「めくる」もいいですよね。しぐさを示す言葉としてなんだか湿っぽい。そして最後に漢字で「生地見本」。生地見本の中身は味気のないもの。季語の中にも、句の全体の中にも、華やかさと冷たさ、しっとりしたとこと無味乾燥なとこ、うまく対比されていて、よりその女性のしぐさが艶っぽく感じるのかなー…と、思いました。

他には、「短日のピアノを噛んでいた子供」、「放火魔は少年でした初桜」、「冬籠切手は左側に貼る」あたりも好きです。「冬籠切手は・・・」もかなり好きです。どっちを取り上げるか迷いました。

で、ですね、長嶋さん。サインをもらったのはいいんですが、ボクの名前(俳号)の漢字を間違えているんですよ~w